業務委託契約書の書き方|個人事業主・フリーランスとの契約条項とフリーランス法の明示事項

公開:更新:執筆:FINSTEP合同会社(FIN SIGN 運営)

「フリーランスに仕事を頼みたいが、契約書に何を書けばいいか分からない」「フリーランス法で発注者に義務ができたと聞いたが、契約書をどう直せばいいのか」。小さな会社や個人事業主の方からよく受ける相談です。基本契約書に置く条項の要点と、フリーランス法が求める取引条件の明示への対応を、条文をもとに整理します。

業務委託基本契約と個別契約(発注書)の二層にする理由

個人事業主やフリーランスに継続して仕事を頼むときは、取引全体に共通するルールを定めた「業務委託基本契約書」と、案件ごとの内容・報酬・納期を定めた「個別契約(発注書)」の二層に分けるのが実務の基本です。基本契約を一度結んでおけば、以後は案件ごとに発注書を交わすだけで済みます。

民法上、契約は申込みと承諾の合意で成立し、書面は原則として成立の要件ではありません(民法第522条)。それでも契約書を作るのは、報酬・納期・権利の帰属といった争いになりやすい点を、双方が確認した形で残すためです。さらに2024年11月に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注者に取引条件の明示を義務づけました。基本契約書と発注書の二層構成は、この明示義務に対応するうえでも都合のよい形です。

フリーランス法で発注者が明示する事項

フリーランス法は、従業員を使用しない個人事業主や一人法人(特定受託事業者)に業務を委託する事業者を対象にした法律です。契約書の作り方に直接かかわる規定を順に見ていきます。

第3条|取引条件の明示(発注者全員に適用)

業務を委託したときは、直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面または電磁的方法で明示しなければなりません。明示すべき事項は公正取引委員会の規則で定められており、主なものは次のとおりです。

この義務は、発注者自身がフリーランスや一人法人であっても課されます。資本金や従業員数による除外はありません。

電磁的方法でよいこと、書面を求められたら交付すること

明示は電子メール、チャットツールのメッセージ、電子契約サービスなどの電磁的方法で行って構いません。ただし、受注者から書面の交付を求められたときは、遅滞なく書面を交付する必要があります(第3条第2項)。電子で明示していても、紙を求められたら応じる必要があります。

第4条|報酬は受領日から60日以内に支払う

従業員を使用する発注者(特定業務委託事業者)は、成果物を受領した日(役務の場合は提供を受けた日)から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定め、その日までに支払わなければなりません。起算点は検収の完了日ではなく受領日です。支払期日を定めなかった場合は、受領日が支払期日とみなされます。基本契約書の支払条項は、この60日の枠に収まるように書きます。

第16条|継続的な委託を終わらせるときの予告

6か月以上の継続的な業務委託を解除したり、期間満了で更新しないことにしたりするときは、原則として少なくとも30日前までに予告しなければなりません。受注者から理由の開示を求められたときは、これに応じる必要もあります。基本契約書の解除条項や期間満了の扱いは、この30日前予告と矛盾しないように書きます。

このほか、1か月以上の継続的な委託では、受領拒否、報酬の減額、買いたたきなどが禁止されています(第5条)。契約書に書いても許される行為ではありません。

基本契約書の条項ごとの書き方

基本契約書に置く代表的な条項と要点を順に見ていきます。発注者を「甲」、受注者を「乙」とします。

業務内容と個別契約

基本契約では業務の種類を大きく定め、具体的な内容・数量・納期・報酬は個別契約(発注書)で定める旨を書きます。「個別契約は、甲が発注書を交付し、乙が承諾の意思表示をしたときに成立する」と定め、電子メールや電子契約サービスでの交付でも成立することを明記しておくと、フリーランス法の電磁的方法による明示と合わせやすくなります。基本契約と個別契約の内容が食い違ったときにどちらを優先するかも、ここで決めておきます。

あわせて、作業の方法・場所・時間は乙の裁量に委ねる旨を書き、雇用ではなく業務委託であることを明らかにします。実態が指揮命令関係になっていれば文言だけでは守れません。

報酬・支払期日

報酬の額または算定方法、締め日、支払期日、振込手数料の負担、消費税の扱いを定めます。支払期日は「乙の給付を受領した日から60日以内」に収まる形にします。例として「甲は、乙の給付を受領した日の属する月の末日で締め、翌月末日までに乙の指定する口座へ振り込む」という書き方であれば、受領日から最長でも約60日に収まります。締め日と支払日の組み合わせによっては60日を超えるので、実際の日数を数えて確かめてください。

経費

業務の遂行に必要な経費をどちらが負担するかを定めます。乙の負担を原則としつつ、甲が事前に承認した交通費や資材費などの実費は甲が負担する、という形が一般的です。

納品と検収

納品の方法と、甲が検査を行う期間を定めます。「甲は、納品から10営業日以内に検査を行い、不合格の場合はその理由を通知する。期間内に通知がないときは合格したものとみなす」という形にしておくと、検収の放置で支払が遅れることを防げます。フリーランス法の明示事項にある「検査完了期日」とも対応します。納品後に見つかった不具合への対応(契約不適合責任)の期間も、ここで定めておきます。

知的財産権の帰属

成果物の著作権などの知的財産権を甲に移転するのか、乙に残したまま甲に利用を許諾するのかを決めます。著作権を移転する場合は、著作権法第27条(翻案権等)と第28条(二次的著作物の利用に関する権利)を明記しないと、これらは譲渡の対象に含まれなかったものと推定されます(著作権法第61条第2項)。あわせて著作者人格権を行使しない旨を入れるのが通例です。乙が従前から持っていたノウハウや汎用的な部品は乙に留保する、という線引きも入れておきます。

再委託

乙が業務の全部または一部を第三者に再委託できるか、できるとすれば甲の事前承諾を要するかを定めます。再委託を認める場合も、再委託先の行為について乙が甲に対して責任を負うことを明記します。

秘密保持と個人情報

業務上知り得た相手方の情報を第三者に開示・漏えいしないこと、目的外に使用しないこと、契約終了後も一定期間(3年程度とすることが多い)義務が続くことを定めます。個人情報を扱う業務では、個人情報の保護に関する法律に基づく安全管理措置を講じること、業務終了後は返還または消去することを求めます。

契約期間・解除

基本契約の有効期間と、自動更新の有無を定めます。中途解約は「1か月前までに書面で通知することで解約できる」とするのが一般的で、フリーランス法第16条の30日前予告と整合します。あわせて、相手方の契約違反や支払停止などがあった場合に、催告なしで解除できる事由を列挙します。

損害賠償

契約違反によって相手方に損害を与えた場合の賠償責任を定めます。個人事業主と結ぶ契約では、乙の賠償責任の上限を「当該個別契約の報酬額」に限る定めを置くことが多く、故意または重過失の場合は上限を適用しない形にします。

反社会的勢力の排除

自らが反社会的勢力でないことを双方が表明し、違反が判明したときは催告なしで解除できると定めます。各都道府県の暴力団排除条例で努力義務とされている条項です。

合意管轄と電子契約による締結

紛争になったときの裁判所を定めます。「専属的合意管轄裁判所」と書かないと、他の裁判所に訴えられる余地が残ります。電子契約で締結する場合は、電磁的記録を契約書の原本とすること、双方が署名または同意の操作をした時点で契約が成立すること、電磁的記録を双方が保管することを確認する条項を置きます。契約の成立に書面は要らないのが原則なので(民法第522条第2項)、これは後から「電子で結んだ覚えはない」と争われないための確認条項です。なお、電子契約で締結した場合の印紙税の扱いは、電子契約と印紙税の記事に委ねます。

発注書に書く項目(明示事項と対応させる)

基本契約書には業務の種類や支払条件しか書かれていないことが多く、それだけではフリーランス法第3条の明示義務を果たしたことになりません。案件ごとの発注書に次の項目を置き、第3条の明示事項と一対一で対応させます。

発注書を電子契約サービスや電子メールで送れば、「いつ、何を、いくらで」明示したかの記録が残ります。公正取引委員会は違反した事業者への勧告を公表しており、明示したことを後から示せる形で残しておくことが大切です。

まとめ

本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の事案に対する法的助言ではありません。契約書の作成にあたっては弁護士にご相談ください。

よくある質問

フリーランス同士の取引でも契約書は必要ですか?
法律上、契約は合意だけで成立し、契約書がなくても有効です(民法第522条)。ただし、フリーランス法第3条の取引条件の明示義務は、発注者自身がフリーランスや一人法人であっても適用されます。電子メールでも構いませんので、記録が残る形で明示してください。
基本契約書を結んでいれば、フリーランス法の明示義務は果たしたことになりますか?
基本契約書だけでは足りないことが多いです。明示事項には案件ごとの給付の内容、受領の期日、報酬の額と支払期日が含まれ、これらは通常、基本契約書には具体的に書かれていません。案件ごとの発注書で補い、送った記録を残してください。
電子契約で結んだ契約書について、相手から紙を求められたらどうしますか?
フリーランス法第3条第2項により、受注者から書面の交付を求められたときは、遅滞なく書面を交付する必要があります。締結済みのPDFを印刷して渡す形で対応できます。紙で交付した文書の印紙税の扱いは、電子契約と印紙税の記事で解説しています。
受注側(フリーランス)が契約書を用意しても構いませんか?
構いません。その場合は、契約不適合責任の期間、損害賠償の上限、合意管轄の裁判所など、受注者に不利になりやすい条項を自分の立場で見直してください。発注者側は、フリーランス法の明示事項が契約書と発注書で揃っているかを確認します。

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参考・出典

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、法的・税務上の助言ではありません。法令の内容は公開時点のものです。個別の判断は弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。