電子契約の契約書と電子帳簿保存法|保存の要件・保管方法・保存期間
電子契約で結んだ契約書は「電子取引」のデータとして、電子帳簿保存法の保存義務の対象になります。保存の要件、印刷して紙で保管してよいか、保存期間は7年か10年か、税務署への届出や利用料の勘定科目まで、担当者が迷いやすい点を順に整理します。
電子契約の契約書は、電子帳簿保存法の「電子取引」のデータ
電子帳簿保存法第7条は、所得税と法人税の保存義務者が電子取引を行った場合、その取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない、と定めています。電子取引とは、注文書・契約書・請求書・領収書などの取引情報を電子データでやり取りすることで、電子契約サービスで締結した契約書はこれに該当します。
2022年1月の改正で、電子取引のデータを紙に出力して保存する方法は廃止され、2年間の宥恕措置を経て、2024年1月からは電子データのまま保存することが原則になりました。電子契約を導入する会社は、締結した契約書 PDF をどのように保存するかを、導入と同時に決めておく必要があります。
電子契約の保存の要件は「真実性」と「可視性」の2つ
電子帳簿保存法施行規則第4条は、電子取引のデータ保存について、大きく2つの要件を定めています。
真実性の要件(改ざんされていないこと)
次のいずれかの措置を取ることが求められます。
- タイムスタンプが付された後にデータの授受を行う
- データの授受後、速やかにタイムスタンプを付す
- 訂正や削除の履歴が残る、または訂正や削除ができないシステムでデータの授受と保存を行う
- 訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定め、それに沿って運用する
中小企業で最も取り入れやすいのは、4つ目の「事務処理規程」です。国税庁がサンプルを公開しており、自社の運用に合わせて整備すれば、システム側の機能に関わらず要件を満たせます。電子契約サービスの改ざん検知や操作履歴は、この規程による運用を補強する位置づけになります。
可視性の要件(検索要件:取引年月日・金額・取引先)
- ディスプレイやプリンタなど、データを速やかに出力できる装置を備えておく
- システムの概要を記載した書類を備え付ける(自社開発の場合)
- 検索機能を確保する
検索機能として求められるのは、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できること、日付と金額は範囲を指定して検索できること、2つ以上の項目を組み合わせて検索できること、の3点です。ただし、税務職員によるデータのダウンロードの求めに応じられるようにしている場合、範囲指定と組み合わせの要件は不要とされています。
検索要件が不要になる場合と猶予措置
売上高5,000万円以下などの事業者
基準期間(2年前の事業年度)の売上高が5,000万円以下の事業者は、ダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件そのものが不要とされています(2024年1月以降。それ以前は1,000万円以下)。また、電子取引データを出力した書面を取引年月日その他の日付と取引先ごとに整理して提示できるようにしている事業者も、同様に検索要件が不要です。
相当の理由がある場合の猶予措置
2024年1月以降、保存要件に従って保存できなかったことについて相当の理由があると所轄税務署長が認め、かつ、税務調査の際にデータのダウンロードと出力書面の提示・提出に応じられる場合には、要件を満たしていなくてもデータの保存が認められる猶予措置があります。ただし、これは「紙だけ保存すればよい」という意味ではなく、電子データ自体は保存しておく必要があります。
電子契約の契約書の保管方法|印刷して紙で保存してはいけないのか
2024年1月以降、電子取引のデータは電子データのまま保存するのが原則で、印刷した紙だけを保管する方法は原則として認められていません。社内の確認用に印刷すること自体は差し支えありませんが、それは写しであって、保存義務を果たしたことにはなりません。元の PDF を消さずに残しておくことが前提です。
保管する場所は、電子契約サービスの中、自社のファイルサーバーやクラウドストレージ、またはその両方が考えられます。どこに置く場合でも、上の2つの要件(改ざんされていないこと、探して出力できること)を満たす形にします。サービスを解約する可能性も踏まえ、締結済みの PDF と証明書をまとめてダウンロードできるかを、導入の前に確かめておくと安心です。
契約書の保存期間は7年か10年か
電子取引のデータも、紙の帳簿書類と同じ期間の保存が必要です。法人の場合、法人税法上、帳簿書類は原則として事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が求められます(法人税法施行規則第59条ほか)。青色申告で欠損金の繰越控除を受ける事業年度については10年間です。契約書は取引の基礎になる書類として、この保存期間の対象に含まれます。
これとは別に、会社法第432条は、会計帳簿とその事業に関する重要な資料を10年間保存することを求めています。どの契約書がこれに当たるかは会社ごとの判断になるため、重要な契約は10年を目安に残しておく、という運用をとる会社もあります。自社の扱いは税理士に確認してください。
税務署への届出は要るのか
電子取引のデータ保存を始めるにあたって、税務署への事前の承認申請や届出は不要とされています(帳簿の電子保存やスキャナ保存の事前承認の制度も、2022年1月の改正で廃止されました)。必要なのは届出ではなく、税務調査の際にデータの提示やダウンロードの求めに応じられる状態にしておくことです。どの契約書がどこに保存されているかを、担当者が替わっても説明できるようにしておきましょう。
電子契約サービスの利用料の勘定科目
電子契約サービスの利用料は、一般に「通信費」または「支払手数料」で処理している会社が多いようです。どちらが正しいという決まりはなく、一度決めた科目を毎期継続して使うことが大切です。なお、紙の契約書で「租税公課」として計上していた印紙税は、電子契約では課税文書の作成に当たらないとされるため、発生しません。具体的な処理は、顧問の税理士に確認してください。
FIN SIGN での対応の範囲
FIN SIGN では、契約書ごとに取引年月日・取引金額・取引先を入力する欄が最初から用意されており、締結済みの契約書を一覧画面でこの3項目で絞り込めます。締結時の PDF のハッシュ値と操作の履歴を記録し、合意締結証明書に載せています。締結済みの文書は7年間保管し、まとめてダウンロードすることもできます。
一方で、真実性の要件のうち事務処理規程の整備や、社内での保存の運用、税務上の判断は、利用者側で行っていただく部分です。FIN SIGN が担うのは検索項目の記録と改ざん検知と保管であり、電子帳簿保存法への対応全体を保証するものではありません。運用全体の適否は税理士や所轄の税務署にご確認ください。
導入時に決めておくこと
- 締結済みの契約書 PDF をどこに保存するか(電子契約サービス内か、自社のストレージか、両方か)
- 真実性の要件をどの措置で満たすか(事務処理規程を整備するのが現実的)
- 検索要件が必要な事業者か、不要になる条件に当たるか
- 取引年月日・取引金額・取引先を、誰がいつ入力するか
- 保存期間(7年、場合により10年)のあいだ、データを失わない体制と、サービスを解約するときの持ち出し方
まとめ
- 電子契約で締結した契約書は電子取引のデータで、2024年1月以降は電子のまま保存するのが原則
- 要件は真実性(改ざん防止)と可視性(出力と検索)の2つ
- 売上高5,000万円以下などの事業者は検索要件が不要になる場合があり、相当の理由があれば猶予措置もある
- 印刷した紙だけの保管は原則として認められず、保存期間は7年(欠損金の繰越控除を受ける年度は10年)
- 税務署への届出は不要。サービスの機能と自社の事務処理規程を合わせて要件を満たす
本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の事案に対する税務上の助言ではありません。具体的な運用は税理士または所轄の税務署にご相談ください。
よくある質問
- 電子契約で結んだ契約書を、印刷して紙で保存してはいけないのですか?
- 2024年1月以降、電子取引のデータは原則として電子データのまま保存する必要があります。印刷した紙だけを保存する方法は、原則としては認められていません。ただし、相当の理由がある場合の猶予措置があり、その場合はデータのダウンロードと出力書面の提示に応じられるようにしておく必要があります。
- 検索要件は、どんな会社でも必要ですか?
- 基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者や、出力した書面を取引年月日と取引先ごとに整理して提示できる事業者は、税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしておけば検索要件が不要とされています。該当するかは国税庁の一問一答と税理士に確認してください。
- 電子契約サービスを使えば、電帳法の要件はすべて満たせますか?
- サービスが担えるのは、検索項目の記録や改ざん検知など保存の一部です。真実性の要件のうち事務処理規程の整備や、社内での運用は事業者側で行う必要があります。サービスの機能と自社の運用を合わせて要件を満たす、という考え方が必要です。
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参考・出典
- 会社法 第432条(e-Gov 法令検索)
- 国税庁 タックスアンサー No.5930「帳簿書類等の保存期間」
- 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)第7条(e-Gov 法令検索)
- 電子帳簿保存法施行規則 第4条(e-Gov 法令検索)
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」
- 国税庁「電子取引データの保存方法をご確認ください」
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本記事は一般的な情報の提供を目的としており、法的・税務上の助言ではありません。法令の内容は公開時点のものです。個別の判断は弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。