電子契約に印紙(収入印紙)は不要?|国税庁の見解と根拠、印刷した場合の注意点
「電子契約にすると収入印紙が要らない」とよく言われます。なぜそう言えるのか、どこまで言えるのかを、根拠になっている条文と公的な見解に当たりながら整理します。
印紙税は「紙の文書」にかかる税金
印紙税は、印紙税法の別表第一に定められた「課税文書」を作成したときに課される税金です。契約書であれば、請負に関する契約書(第2号文書)や、継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)などが該当し、作成者が収入印紙を貼って納めます(印紙税法第2条・第3条)。
ここで大事なのは、課税の対象が「文書」であることです。印紙税法は、契約という行為そのものではなく、契約の内容を記した紙の書面を作成したことに対して税を課す仕組みになっています。同じ契約でも、書面を作らなければ印紙税は発生しません(口頭の契約に印紙は要りません)。
電子契約に印紙(収入印紙)が不要なのはなぜか|国税庁の見解と根拠
国税庁の見解:課税文書の「作成」に当たらない
国税庁の質疑応答事例では、請負契約の注文請書を電磁的記録(PDF など)に変換して電子メールで送信した場合について、「課税文書を作成したことにはならない」ため印紙税の課税原因は発生しない、という趣旨の見解が示されています。文書の「作成」とは、用紙に記載して相手方に交付することを指す、という印紙税法基本通達の考え方が前提になっています。
国会での政府答弁
2005年(平成17年)3月には、参議院議員の質問主意書に対する政府答弁書で、電磁的記録により作成されたものについては、印紙税法上の課税文書に当たらず課税されない、という趣旨が確認されています。国税庁の個別の見解だけでなく、政府としての答弁が残っている点は、担当者が社内で説明するときの拠り所になります。
整理すると
- 印紙税は紙の課税文書を作成したときにかかる
- 電子データで作成・送信・締結した契約は、課税文書の作成に当たらないとされている
- したがって、電子契約では収入印紙を貼る必要がない、と一般に説明されている
ただし、これらは現行法と公的見解に基づく整理であり、法令や通達の改正、個別の事情によって結論が変わる可能性があります。金額の大きな契約や判断に迷う契約は、税理士や所轄の税務署に確認することをおすすめします。
どれくらいの負担が変わるのか
印紙税額は文書の種類と記載金額で決まります。たとえば請負に関する契約書は、記載金額が100万円以下で200円、100万円を超え200万円以下で400円と段階的に上がり、継続的取引の基本となる契約書は1通につき4,000円です(国税庁「印紙税額の一覧表」)。金銭消費貸借契約書(第1号文書)や、注文を受けた側が出す注文請書(請書)も、紙で作れば金額に応じた印紙が必要な文書ですが、電子データで作成して交付する場合の考え方は上と同じです。
1通あたりの額は小さく見えますが、業務委託契約や取引基本契約を毎月何通も交わす会社では、年間で見ると無視できない額になります。加えて、印紙を買いに行く手間、貼り忘れの確認、契約書の郵送や返送の往復も無くなります。印紙税だけでなく、契約締結にかかる時間と作業がまとめて減る、というのが電子契約の実務上の効果です。
電子契約を印刷(プリントアウト)したら印紙は必要か|注意したい3つのケース
紙で作ってから PDF にした場合
紙の契約書に署名・押印してから、スキャンして PDF で保管する運用は、紙の文書を作成した時点で課税文書に当たります。「電子で保存している」ことと「電子で作成した」ことは別です。印紙税がかからないのは、最初から電子データとして作成し、電子のまま締結した場合です。
電子契約を締結後に印刷・プリントアウトした場合
電子で締結した契約書を、社内の確認や保管のために印刷しただけであれば、それは写しであり、課税文書の作成には当たらないと考えられています。一方で、印刷したものに改めて署名や押印をして相手に渡すと、その紙が新たな課税文書になる可能性があります。電子で締結したなら、控えも電子のまま扱うのが安全です。
片方だけ紙で締結する場合
自社は電子で署名し、相手には印刷したものに押印してもらって返送を受ける、という混在運用では、紙の側が課税文書になり得ます。相手方も電子で対応できるサービスを選ぶことが、印紙税の観点でも大切です。
なお、貼るべき印紙を貼らなかった場合には、本来の印紙税額とその2倍に相当する額の合計(3倍)の過怠税が課されることがあります(印紙税法第20条)。「電子だから不要」と思い込んで、実は紙の課税文書を作っていた、という事故を避けるためにも、運用の切り分けを社内で共有しておきましょう。
FIN SIGN での締結の流れ
FIN SIGN は、お手元の契約書 PDF をアップロードし、相手のメールアドレスに送るだけで、相手はスマートフォンの画面で内容を確認して手書きの署名か「同意する」ボタンで合意できる電子契約サービスです。作成から締結まで電子のまま完結し、締結済みの PDF と合意締結証明書が双方に届きます。相手側にアプリのインストールや会員登録は不要です。
契約書の内容は利用者が用意したものをそのまま使います。FIN SIGN は契約書の中身には関与せず、締結と保管の手段を提供します。
まとめ
- 印紙税は紙の課税文書の作成に課される税で、電子データで作成・締結した契約は課税文書の作成に当たらないとされている
- 根拠は印紙税法の条文と、国税庁の質疑応答事例、政府答弁書にある
- 紙で作成してから PDF 化した場合や、印刷して改めて押印・交付した場合は課税され得る
- 迷うときは税理士か所轄の税務署に確認する
よくある質問
- 電子契約なら、どんな契約書でも印紙税はかからないのですか?
- 課税文書に当たる種類の契約でも、電磁的記録として作成・交付した場合は課税文書の「作成」に当たらないとされています。ただし、紙で作成して署名・押印した後にPDF化したものは、紙の文書を作成した時点で課税対象です。
- 電子契約の後で、控えとして印刷したら印紙が必要になりますか?
- 締結済みの電子契約を保管や確認のために印刷しただけの写しは、課税文書の作成に当たらないと考えられています。印刷したものに改めて署名や押印をして相手に交付すると、その紙が課税文書になる可能性があります。
- 電子契約にすれば、税務上の他の義務も無くなりますか?
- 無くなりません。印紙税は文書に対する税で、電子化により課税対象外になるというだけです。電子取引のデータは電子帳簿保存法の要件に沿って保存する必要があり、法人税法上の保存期間も変わりません。
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参考・出典
- 印紙税法(e-Gov 法令検索)
- 国税庁 質疑応答事例「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係」
- 参議院 第162回国会 質問主意書 第9号に対する答弁書(平成17年3月15日)
- 国税庁「印紙税額の一覧表」
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本記事は一般的な情報の提供を目的としており、法的・税務上の助言ではありません。法令の内容は公開時点のものです。個別の判断は弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。